怖い話

怖かった話を書こうと思います。

体験談です。


仕事とか絵とかまったく関係の無い話です。
あと霊は出てきません。
もう何年か前の話です。

私は仕事のお使いで、渋谷警察署の前を自転車で走っていました。

前方に松葉杖をついた20代くらいの男性が歩いていたので、じゅうぶん距離を取り、彼の横を通り抜けようとしました。
そうしたらすれ違いざま彼は手を伸ばし、松葉杖の先を私の漕ぐ自転車の方へわざわざ差し入れて来ました。

松葉杖の先はペダルに当たり硬くて大きな音がしました。

一瞬の出来事だったんですが、彼がわざと松葉杖を出してきたのは理解できました。

悪魔がいるなと思いました。

そのまま通り過ぎようかと思ったんですが、ブレーキをかけて振り返り「すみません!大丈夫でしたか!?」と聞きました。

悪魔に偽善者ぶって話しかけてみるテストです。

彼は一瞬、驚いた表情を見せました。
私が彼の目論見に気付いていながら、そ知らぬふりで謝ったのを察知したからです。

そう…この時点でお互い茶番に気付きまくっていました。
ぶつかった瞬間、目が合っただけなのに不思議なものです。

でも彼はすぐ驚いた表情を引っ込めて、ニヤついた顔で「ああ、大丈夫ですよ~」と言いました。

私は自転車を手で押しつつ彼のそばまで行って、再び「本当すみません。本当に大丈夫でしたか?」と謝りました。
彼は、笑顔で「大丈夫です。本当に」

たぶん彼は、そういう遊びをしてたんだと思います。
自転車の前輪に物が挟まると、急ブレーキをかけたみたいになって自転車は大きく前転します。
(前輪に物が挟まって前輪がロック状態になると、人が乗ってても尻が上がって180度回転できます。これは自爆で経験済みです。)

距離を取ってたから届かなかったけど、本当は車輪に松葉杖を巻き込ませるつもりだったのでしょう。
そもそも普通だったら、自分の杖が自転車に引っ掛けられたら怒ります。
もし女の子だったら怖がったりもするかも。
少なくともあんなニヤついた顔と態度はしない。

こうなると本当に足が悪かったかどうかも怪しいものです。
実際、話してる間は松葉杖に頼らず普通に立っていたので「足の演技忘れてますよ」と言いそうになりましたが、そこは我慢しました。
もしかしたら足が悪いのは本当かもしれません。


で、少し黙って彼の顔を見て、もう一度ゆっくり「本当に大丈夫ですか?」と聞きました。
私は別の意味で聞いたんですが、彼は「あ、ほんと、大丈夫ですよ!」と、善人ふうな笑顔と口調で答えてました。

病んでるなあと思いました。

でもこういう奴って居るんだよなーと現実を再認識しました。
運よく自転車も自分もケガ一つなかったですが、松葉杖が車輪に入ってたら危なかった。


彼の見た目は渋谷系と言うより秋葉系。
地味なチェックのシャツ、中に白いTシャツ、チノパン、メガネ。
普通のおとなしそうな男性と言う感じです。
状況が違ってたら優しそうにすら見えると思います。


考えてる事が病んでても、それを実行に移す人は少ないと思います。

しかし彼は実行できる一人です。
恐らく狙う相手は女、子供、あとお年寄りとかなのかな。
金の話をしてこなかったから当たり屋とも違います。
愉快犯っていうのかな。こういうのは。

まあ自転車をこかすくらいで満足してればましなのかもしれません。

結果としては「大丈夫なら行きますね」とその場を離れました。

警察署がすぐそこだったけど「こいつ危ない奴です」と言っても信じてもらえない自信がありました。
逆に「松葉杖ついてる怪我人にぶつかった」なーんて話になっちゃったら超がつくほど面倒です。

何とも怖い体験でした。
[ 2012/10/03 17:35 ] 怖い話 | |